くし型フィルタ
1次元フィルタに比べ、2次元フィルタで行える処理の種類は増えます。
そもそも前者は後者の特別な場合といえますから、これは当然です。
14章で、それぞれの走査線の中で完結したYC分離について考えました。
そこでは輝度信号には色副搬送波周波数fscが含まれていないと仮定しました。
これは走査線の中で考える限り、原理的に外せない条件です。
しかし1次元フィルタより2次元フィルタの方が進んだ処理がしやすいのと同じように、自分だけでなく複数の走査線の情報を使うことにより、この仮定なしにYC分離ができる可能性が出てきます。
煩雑になるので12章では述べませんでしたが、NTSC方式ではフレーム内の隣り合った走査線の間では、fsc成分の位相と色情報との関係が、180度ずれています。
つまり、たとえば40度という位相を持つ色副搬送波がある走査線においてある色を示すとすると、その上下の走査線では、220度という位相を持つ色副搬送波が、同じ色を示すことになるのです。
さて、fscと同じ周波数での輝度変化があったとしましょう。
これが1つの走査線だけに出現するのであれば、それはYC分離できません。
しかし通常は縦方向に多少の広がりをもつのが普通です。
つまりある走査線上に現れる明暗パターンは、その上下の走査線にも現れると考えられます。
言葉を変えて言うなら、fscでの値変化が、上下の走査線にも同じように現れていたら、それは輝度変化であると考えるのが妥当なのです。
逆にそのfscでの値変化が、上下の走査線で完全に逆位相になっている場合、これは色情報であると考えるのが妥当です。
つまり、隣り合った走査線の間で画素ごとに引き算し、それでも残るfscでの値変化を色情報と考えることができます。
あるいは隣り合った走査線の間で画素ごとに足し算し、それでも残るfscでの値変化を輝度情報の変化と考えることができます。
これによりYC分離の精度は非常に高まるのです。
このような処理も、一種の2次元フィルタです。
ただしラスタスキャンにより2次元構造は1次元構造に変換されますから、1次元でみた時には、ちょうど走査線周波数だけずれたところとの間で処理するようなフィルタとなります。
その形が、はなればなれではあるが規則的にとんがりを持つ「櫛」を連想させることから、これをくし型フィルタと呼びます。


